花の闇溺れたくもあり温気(うんき)満ち



 富士桜咲くを目印牧の口  室伏やすし  

 富士桜静かに咲けり雨催  渡辺玄子

 富士桜長閑に夕日差しにけり  アロマ

 老ぬれば夢を広げて春の宵  大平保子
 
 春の宵蔵に開かる演奏会  柳堀喜久江

 居酒屋の樽椅子が好き春の宵  宮原みさを

 緞帳のゆっくり上がる春の宵  陶山泰子

 蓮根のさくりさくりと宵の春  荒川清司
 
 マリオネットの足跳ね上がる春の宵 アロマ

 春宵の街玻璃越しのギリシャ壺  橋本良子

 春宵や夫の買ひ来し袋菓子  加古みちよ

 春宵や子らの見舞ひの目張りずし  相沢有理子