坂道の魅力

(松浦寿輝「散歩のあいまにこんなことを考えていた」・・「坂道」文芸春秋 より)

ただ何となく、ぶらぶら歩く「散歩」には・・(ジョギングやゴルフ、テニスといった「スポーツ」とは異なり)特に、これという目的なんかない。でもその「積極的な目的の希薄さ」、更に言うなら、「自分自身の意思に対してさえ、無責任でいられる」点こそ、「散歩」の快楽であり、核心なのである。

そして、何の目的も無くぶらぶら歩いている時に、ふいと脇道を曲った先が、思いがけない”登り坂”になっていたりすると(それまで水平の広がりしか無かった風景に)垂直方向の視界が加わって、景色がパッと豊かに