連載:二人旅

「オリンピックより金峰山」金峰山②

「鹿だ!」
車のヘッドライトに照らされた異様に明るい道端に、巨大な鹿がキョトンとしてこちらを見ている。

「えっ…どこ?」
右側にいたのだが、息子は気付かなかったらしい。カーブだらけで運転に集中している。停まれない。

直ぐにまた今度は左側にいた。先程の鹿よりは小さい。動いた。
「うわっ」
「どいてー、ぶつかるよー」
私は思わず叫ぶ。近過ぎる。鹿は前に動いたが車の前には出なかった。

もう一度見た。あとはただひたすら真っ暗な道を行く。建物一つない大木が茂る山の細い道だ。しかも丑三つ時と言いたくなる時間に。

大抵は鹿を見たらもう一度見たくて車を停めるが、