神様のトリック

 田舎にいた子供の頃、我が家の前の道路を挟んだ斜向かいに、3人の子供がいる家があった。そのうち2人は私の弟と妹の同級生だった。
当時の私にはその家がとてもお金持ちに見えた。家は大きかったし、子供たちは買ってもらえないものはなかったからだが、決定的だったのはどこよりも早くテレビを買えたことだった。
 今振り返ると所詮、山間の農家ばかりの小さな盆地。
名士と言えば学校の先生と、医者と、お坊さんくらいしかいない村だった。だから金持ちといってもたかが知れていたのだが、でもそこが世界の全てだった子供の私には、その家の子が何から何まで恵まれているように思えたし