連載:小説「落ちてぞ滾(たぎ)つ」

小説「落ちてぞ滾(たぎ)つ」 蜂谷 涼 著  (2)

 第2部 流れて世よに

この著者には刑法思想に関する常識が欠けている。刑罰は何のために行うか、昔は「見せしめ」のためだった。社会一般を守るためだった。現在は、民主主義国家では犯罪者自身を更生させるための「教育刑」だ。

 この作者は憎しみのために刑罰を行うと考えている。だから、函館戦争でも旧幕府軍の遺体をかたずけさせず、男気のある侠客(元火消の頭)が勇気を奮って遺体片づけをすると、半死半生の暴行を受け、見かねた某薩摩藩士の制止でやっと助かったと物語を展開している。

 「見せしめ」のため、遺体を片付けさせないとして何日晒すのか、何ヶ月晒すのか、何