遥かな国 遠い昔

作者はハドソン、自分が幼少期に暮らしたアルゼンチンの大草原(パンパス)での思い出を綴った本である。

私自身は二十五歳で日本を飛び出し、パナマ地峡に着いた後、陸伝いに南の端アルゼンチンまで単身騎行を夢見ていた時期もあって、この本に巡り合った時は嬉しかった。自分が果たせなかったことをこの少年がやってくれた、と思ったからだ。

この本と初めて巡り合ったのは、当時スペインから三ヶ月おきにある商品の買い付けのために通っていたボゴタ市(コロンビアの首都)のさる日本レストランで、店主の日本人はてめえがろくに読まないくせして、古い文庫本を収集するのが好きな男であった。