「今村翔吾」の日記一覧

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今村翔吾 の 「茜唄(あかねうた)上」

★3.2 清盛の4男、平知盛から見た平家物語。上巻は各地で反平家の反乱が起き、最後は瀬戸内で木曽義仲軍との戦まで。 清盛が一門を一人でまとめ、あらゆることを決めていくスーパースターとして描かれる。だが、それがゆえに、清盛が死ぬと、残された者は何をやってよいかわからず右往左往するのみ。一門もバラバラになっていく。 そんな中、朝廷とそれを取り巻く官僚に政を任せれば武士は滅亡するしかないと…

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今村翔吾 の エッセイ集「湖上の空」

1984年生まれの若い直木賞作家の随筆集。 生まれ育った家庭環境、時代小説に熱中する少年時代、ダンスインストラクターとなる経緯、30歳で小説家を目指すことを決断したことなどが赤裸々に語られている。 特に父親がやっていたダンスを通じて問題児を更生させる仕事、両親の離婚と父親の再婚、父親との確執など、文章にしづらいことをも吹っ切れたかのように表現している。 京都府生まれながら、滋賀県に…

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今村翔吾 の 蹴れ、彦五郎

★3.3 戦国ものを主とした8つの短編集。 「蹴れ、彦五郎」は今川氏真と室で北条氏康の娘・由稀を、「黄金」は岐阜城主の織田秀信を、「三人目の人形師」は幕末の生人形師の松本喜三郎と安本亀八を、「瞬きの城」は太田道灌を、「青鬼の涙」は元老中で鯖江藩七代藩主の間部詮勝を、「山茶花の人」は上杉家の由良勝三郎と新発田重家を、「晴れのち月」は武田信玄の長男義信と今川の娘・月音を、「狐の城」は北条氏康の五男…

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今村翔吾 の 恋大蛇 羽州ぼろ鳶組 幕間

★3.2 今回は松永源吾もぼろ鳶組も登場しないスピンオフもの。 「流転蜂」は八丈島流罪となった出羽本庄藩2万石六郷家の元火消組頭取・鮎川転の島での活躍譚。 「恋大蛇」は淀藩10万2千石稲葉家の火消組頭取・野条弾馬と京都三条河原町の大旅籠緒方屋の娘・紗代の恋物語。 「三羽鳶」は町火消め組の銀蛍こと銀治、け組の白毫こと燐丞、仁正寺藩火消の凪海こと柊与市の3人によるミステリー。彼らは「黄金の世代…

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石坂浩二と加藤剛と真田広之は、みんなある人物を演じたことがある、さてその人物とはだれか? 答えは本文に出てくるよ

 たまには本の話でもするかね。  今村翔吾の「八本目の槍」(新潮社)を読んだ。今村翔吾。「塞王の盾」が直木賞をとったので、ただいまイチオシの声大。  さて。「八本目の槍」。こういう小説。 「『賤ヶ岳の七本槍』7人それぞれの姿をを通じて、石田三成を描く」  この7人と三成は、いままでの歴史時代小説では「仲悪い」と描くコトが多かったようだから、「好き嫌いはおいて、認めあっていた」と描いたとこ…

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最強の楯と矛

 今村翔吾の「塞王の楯」を読了した。著者は時代小説作家であり、2022年に「塞王の楯」で第166回直木三十五賞を受賞している。本書は直木賞受賞作で、関ケ原の合戦を前にして、城の攻防に死力を尽くす職人達の姿を描いた時代小説である。  本書の主人公は、石垣造りを天職とする穴太衆飛田屋副頭の飛田匡介である。匡介は越前一乗谷の生まれであるが、一乗谷城の浅倉義景は織田信長に滅ぼされる。一乗谷城の落城の際に…

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今村翔吾 の 塞翁の楯

★3.3 穴太衆の最高の技を持つ者を〈塞王〉といい、国友衆随一の職人を〈砲仙〉と呼ぶ。塞王が石垣を積んだ城はいかなる敵も弾くと言われ、砲仙が造った砲で攻めればどんな城も落とすと語られる。だから両者がぶつかった時には大いなる矛盾が生じることになる。どうやら、これをテーマとしたかったよう。 穴太衆の一派である飛田屋の若き指導者・匡介が石積みの経験を重ね頂を目指す物語。立塞がるのは鉄砲鍛冶の頂点に立…

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今村翔吾 の 襲大鳳(上下) 羽州ぼろ鳶組

◆襲大鳳(かさねおおとり)上 羽州ぼろ鳶組★3.3 シリーズ11巻目。前作はこの巻で尾張藩火消頭だった伊神甚兵衛を登場させるための布石だったようだ。18年前、林大学屋敷火事で松永源吾の父・重内は亡骸となった。だが、そこにあるはずの甚兵衛の亡骸は見つからなかった。尾張藩火消を全滅させた者への復讐を狙っていたのだ。 新人火消のい組の慎太郎とめ組の藍助は市中回りの最中に市ヶ谷の尾張藩上屋敷の出火に出…

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今村翔吾 の 黄金雛  羽州ぼろ鳶組 零

★3.5 絵の違うカバーが2枚ある、第2印からか。10作目にしてエピソード0だ。背の色も変えたということはこのまま続くのか。 第8作で〈進藤内記37歳、大音勘九郎と辰一が35歳、松永源吾と蓮次が34歳、秋仁が33歳の黄金世代時代〉とあったが、それが一挙に18年前の宝暦6年(1756年)に。 16歳の源吾が憧れていた尾張藩大名火消頭の伊神甚兵衛は、3年前の目黒付近の野火の事故で172人全員が殉…

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六韜を読む少女

 今村翔吾の「てらこや青義堂-師匠、走る-」を読了した。著者は時代小説作家であり、2018年に「童の神」で第十回角川春樹小説賞を受賞している。本書は、かつて凄腕の公儀隠密だった寺子屋の師匠を主人公とした人情時代小説である。  物語の舞台は明和7年(1770年)である。主人公の坂入十蔵は伊賀組与力坂入家の次男であり、部屋住みの身ではあったが、伊賀組始まって以来の鬼才と呼ばれ、忍びの技だけではなく、…

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今村翔吾 の 双風神 羽州ぼろ鳶組9

★3.3 シリーズ9作目。京の淀藩常火消頭・野条弾馬からの依頼で源吾、星十郎、武蔵は大坂へ。 焰風が大きくなり竜巻に変じる「緋鼬(あかいたち)」が頻発するのだ。何者かが付け火で故意に発生させている。 星十郎は必死に緋鼬の消滅策を探り六角獄舎の罪人・野狂惟兼に策を求めたが・・。幕府天文方の山路も応援に駆け付けた。 大坂は5つの町火消のみ、だが結束に欠ける彼らを一つに緋鼬に当たる必要から源吾の秘策…

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今村翔吾 の 玉麒麟 羽州ぼろ鳶組8

★3.5 シリース8作目。 玉麒麟とは梁山泊の副頭領の字名。鳥越新之助が付け火事件に巻き込まれその下手人に仕立てられた。 日本橋の橘屋に賊が押し入り一家は斬殺された。訪れた新之助が助けえたのは見合い相手の琴音とその妹の玉枝のみ。だが突如、火盗改に取り囲まれた。かくして新之助の逃走劇が始まる。またしても一橋治済の陰が。 田沼の依頼で助太刀に現れたのは本所の銕。進藤内記37歳、大音勘九郎と辰一が…

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まつろわぬ者達

 今村翔吾の「童の神」を読了した。著者は時代小説作家であり、2018年に本書で第十回角川春樹小説賞を受賞している。本書は、源頼光による大江山の酒呑童子退治をモチーフとし、朝廷にまつろわぬ者達の闘いを描いた伝奇時代小説である。  安和2年(969年)、左大臣源高明は土蜘蛛、鬼や夷等、童(わらわ)と総称される化外の民との同和を訴えるために、源満仲の同心を得て安和の乱を起こす。高明の従者の藤原千晴は陰…

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今村翔吾 の 狐花火 羽州ぼろ鳶組7

★3.3 シリーズ7作目。 明和9年(1772年)の大火から2年、花火師・秀助の再来かと思わせる付け火が頻発する。 源吾とともに探索に乗り出すのは麹町定火消の頭取・日名塚要人。なんと田沼によって麹町定火消の全員が公儀隠密の者どもに入れ替わったようだ。 新たに暗躍するのは秀助の弟子・種三郎と顔の左半分に火傷のある男。追い詰めるものの取り逃がしてしまった。 他に番付狩りをやる慶司、町火消「い組…

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今村翔吾 の 童の神

★3.4 H30下直木賞候補作。 平安時代には数々の伝説が残る。藤原秀郷の近江三上山の百足退治や、源頼光と四天王(渡辺綱、坂田金時、碓井貞光、卜部季武)による土蜘蛛退治や大江山の酒呑童子討伐、更には平将門の娘とされる妖術使いの滝夜叉姫など。 退治された者どもは言われるような鬼や妖怪の類ではない、彼らこそ時の朝廷に「まつろわぬもの」であり、蔑んで「童」と呼ばれたものたちである。 越後蒲原郡の…

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今村翔吾 の 夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組6

★3.3 シリーズ6作目。 安永3年(1774年)、源吾は35歳(田沼も側用人から老中に就任し2年が経過)になった。 吉原で不審火が頻発し、彦弥が妓楼「醒ケ井」の花魁・花菊を救出したことが縁で、源吾が探索に乗り出す。 吉原火消を派遣している大見世の主らは火事を恐れていない(焼け出されて仮見世の営業の方が実入りが良い)という設定。 不審火には共通点は無く、何者かが操っているに違いない、深雪は…

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今村翔吾 の くらまし屋稼業

★3.3 あの「羽州ぼろ鳶組」の作者の新シリーズ初作。 堤平九郎は3年前に西国からに江戸へやってきた。七瀬と赤也という仲間を得て「くらまし屋」という逃がし屋を始めた。 平九郎は驚異的な剣の技、七瀬は策を練る頭脳、赤也は変装能力を武器とする。 今回は香具師の大親分から3人の男女を江戸の外へ逃がすこと。予想もしなかった80丁立の駕籠。後のドタバタ(裏の裏の技)は返って面白みを削ぐ。 読者の予…

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今村翔吾 の 菩薩花 羽州ぼろ鳶組5

★3.3 シリーズ5作目。 今回は火消番付にまつわる物語。新庄藩と同様の貧乏藩・仁正寺藩1万8千石。次の番付で三役入りがなければ、大幅減員と家老から告げられた頭の柊与市の取った行動は。 番付は府下10名の有名読売書きの審議で決められる。異常に早く駆けつけ、消し口を奪う大物食いに走る仁正寺藩、その陰で不審な動きをする八重洲河岸定火消が・・。 火消専門の読売・文五郎の行方不明事件では加賀鳶の娘…

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今村翔吾 の 鬼煙管 羽州ぼろ鳶組4

★3.5 シリーズ4作目。 京の西町奉行・長谷川平蔵の危機に、松永源吾が呼ばれた、供は星十郎と武蔵。 サイフォンを使った連続殺人・青坊主事件に続き、死体からの連続発火・火車事件が起きる。武蔵は竜土水の平井利兵衛(架空か)の水工技術が絡むとにらみ賊を追うが。 それぞれの事件を陰で操るのは幕府と暦の発行権益を争う土御門の勢力が・・。(冲方丁の「天地明察」や鳴海風の「和算忠臣蔵」ではその確執を扱…

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今村翔吾の 九紋龍 羽州ぼろ鳶組3

★3.6 シリーズ3作目。今回は町火消最強の「に組」の頭・九紋龍に絡む物語。日本橋の呉服問屋・出雲屋はかつて盗賊の千羽一家に家族を皆殺しにされ、生き残った男こそ九紋龍こと辰一。 一味が付け火をして富豪を襲う手口を、松永源吾は軍師たる星十郎とともに解き明かし、対抗策を・・。見事一味を捕縛したが、主だった者はいなかった。この話は次作も続くのかな。 国許から御連枝の戸沢正親が出府して、火消の削減を…