たまには本の話でもするかね。 今村翔吾の「八本目の槍」(新潮社)を読んだ。今村翔吾。「塞王の盾」が直木賞をとったので、ただいまイチオシの声大。 さて。「八本目の槍」。こういう小説。 「『賤ヶ岳の七本槍』7人それぞれの姿をを通じて、石田三成を描く」 この7人と三成は、いままでの歴史時代小説では「仲悪い」と描くコトが多かったようだから、「好き嫌いはおいて、認めあっていた」と描いたとこ…
今村翔吾の「塞王の楯」を読了した。著者は時代小説作家であり、2022年に「塞王の楯」で第166回直木三十五賞を受賞している。本書は直木賞受賞作で、関ケ原の合戦を前にして、城の攻防に死力を尽くす職人達の姿を描いた時代小説である。 本書の主人公は、石垣造りを天職とする穴太衆飛田屋副頭の飛田匡介である。匡介は越前一乗谷の生まれであるが、一乗谷城の浅倉義景は織田信長に滅ぼされる。一乗谷城の落城の際に…
今村翔吾の「てらこや青義堂-師匠、走る-」を読了した。著者は時代小説作家であり、2018年に「童の神」で第十回角川春樹小説賞を受賞している。本書は、かつて凄腕の公儀隠密だった寺子屋の師匠を主人公とした人情時代小説である。 物語の舞台は明和7年(1770年)である。主人公の坂入十蔵は伊賀組与力坂入家の次男であり、部屋住みの身ではあったが、伊賀組始まって以来の鬼才と呼ばれ、忍びの技だけではなく、…
今村翔吾の「童の神」を読了した。著者は時代小説作家であり、2018年に本書で第十回角川春樹小説賞を受賞している。本書は、源頼光による大江山の酒呑童子退治をモチーフとし、朝廷にまつろわぬ者達の闘いを描いた伝奇時代小説である。 安和2年(969年)、左大臣源高明は土蜘蛛、鬼や夷等、童(わらわ)と総称される化外の民との同和を訴えるために、源満仲の同心を得て安和の乱を起こす。高明の従者の藤原千晴は陰…