私小説 と 水上勉の「凍てる庭」
「凍てる庭」は水上勉が新聞連載小説として執筆し、自身の戦後を描いた自伝的小説である。水上勉(みなかみ つとむ)は本名で、ペンネームは途中から「みずかみ つとむ」と名乗ることにした。 水上は本当に苦労の多かった作家で、若狭の僻村の大工の家に生まれたが、幼時は貧困で勉学の機会は無かった。ただ、とても賢いと評判になり選ばれて寺に入らされ、旧制花園中学卒業まで学ばされた。ただ、寺の修行はあまり…
「凍てる庭」は水上勉が新聞連載小説として執筆し、自身の戦後を描いた自伝的小説である。水上勉(みなかみ つとむ)は本名で、ペンネームは途中から「みずかみ つとむ」と名乗ることにした。 水上は本当に苦労の多かった作家で、若狭の僻村の大工の家に生まれたが、幼時は貧困で勉学の機会は無かった。ただ、とても賢いと評判になり選ばれて寺に入らされ、旧制花園中学卒業まで学ばされた。ただ、寺の修行はあまり…
言葉による芸術、文学は、人間の「知」に直接語りかける。その文学は、19世紀末に始まった文学運動である自然主義が、重要な起点になっているといえる。なぜなら、現代の文学作品はほぼ自然主義の考え方を踏襲しているからだ。 エミール・ゾラにより定義された学説の下、19世紀末、フランスを中心に起こった文学運動である自然主義は、自然科学を下に、「真実」を描くために、あらゆる美化を否定する考え方なのだ。 ゾラの…