睡りひろがる氷上通る風厚し 八田木枯 歯にあてし菜漬の氷なつかしく 瀧春一 氷雪をめぐりて風の尾がかちあふ 八田木枯 牛小屋のバケツの中の初氷 田口武 つくばひの松葉とぢこめ初氷 森ひろ 初氷後戻りして触れてみる 高橋みつ 井戸端の庇の氷柱手に取って アロマ 初氷透かし見る空よく晴れて 岩木眞澄 氷の上ペンギン気分ですべったよ …
紙を漉く小屋に夜昼木の実降る 田中藤穂 辛夷咲く紙漉くように日を重ね 富沢秀雄 乳色の水すくひては紙を漉く 田中藤穂 灯りても水揺らす音紙漉場 田中藤穂 漉き紙のハガキにて便り来る アロマ 紙漉や水の暮れゆく音のあり 村上瑪論 紙漉の窓にゆふべの雪明り 長沼三津夫 漉き紙に紅葉沈めて便りする アロマ 紙漉きの村の入口三椏咲く 布…
昼過ぎの漁港とろりと冬日差 隈部郁子 冬日さす神戸駅舎の貴賓室 津田霧笛 薪割の鉈置きしまま雪蛍 谷田明日香 うすうすと日は坂道に雪螢 岩﨑俊 湖の宿朝餉の膳に氷下魚汁 奧田恵美 炙りし氷下魚で一膳飯を アロマ 竿に吊る氷下魚たちまち棒となり 田中久仁子 虹いろの氷下魚跳ねたるまま凍る 岡本敬子 氷下魚焼く部屋くゆらせて旅の果…
積りたる雪に新雪降りつづく 山口波津女 良人 赤蕪の肩新雪となりにけり 中戸川朝人 星辰 新雪やナプキンにあるたたみ皺 原田青児 風凪ぎて富士の新雪輝かす 村上辰良 新雪に何か声澄むさるをがせ 飯田龍太 新雪を来て返しゆく郵便夫 右城暮石 上下 幽きより風新雪の竹しなふ 鷲谷七菜子 銃身 しなのぢや小田は粉雪に蕎麦畠 高井几董 会釈したき新…
猿猪に次ぎて熊出で冬に入る 長田秋男 栗拾ふ熊棚ありしところまで 根岸善行 赤いオーバーに夕暮れの紺深まりぬ 甲田夏湖 オーバーを預け夜会に紛れゆく 稲畑廣太郎 ツイードのオーバーコート二つ持つ アロマ 落葉厚し飛騨の総社の大銀杏 田中藤穂 掬ひては銀杏落葉をまた散らす 藤本艶野 蒼泥む午後四時の公孫樹落ち葉かな アロマ 母に子に銀杏…