さんが書いた連載俳句帳の日記一覧

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三月の俳句帳(131)令和六年3月31日

1)筧より零れる滴(しずく)余寒なお 2)春寒を抱へ帰宅の急(せ)くトイレ 3)二畳狭(せ)ま黒楽椀の茶室春 4)春のたり甲羅(こうら)干したり堀川辺 5)濠水の動きが消えて鳥帰る 6)鳥雲にガランと空きし濠水面(みなも) 7)過疎の春架かる虹観る人少な 8)春愁やショパンノクターン窓辺聴く 9)昏(くら)茂み飛び出す黄蝶光射す 10)口笛に鳴禽(めいきん)呼応(こおう)初音(…

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二月の俳句帳(130)令和六年2月29日

1)三寒へ行きつ戻りつ四温着く 2)春霖(しゅんりん)の和む雨音庭陶器 3)水琴窟響く甕(かめ)の音(ね)風光る 4)禅僧の伸びる背筋や冬座室 5)灯籠の明かり坪庭暮れ遅し 6)炬燵(こたつ)より陽光選ぶ窓辺猫 7)東雲(しののめ)の棚引き昇る立春の月 8)寒翡翠(ひすい)濁る豪雨の河清(かせい)俟(ま)つ 9)一直線翔(と)び来る川面(かわも)春翡翠 10)電線を鳴らし耳刺す…

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1月の俳句帳(129)令和六年1月29日

1)能登半島地震と津波氷雨(ひさめ)降る 2)鎮魂の鐘撞(つ)く寺院音冴える 3)謹んで屠蘇(とそ)酌む杯や輪島塗(わじまぬり) 4)伐採の切り株に載る寒鶲(かんひたき) 5)川段差揺らぐ水音鴨(かも)渉(わた)る 6)喫茶去(きっさこ)の掛け軸跳ねる釜始め 7)短日や句作浮かばず過ぎにけり 8)瀬戸黒に薄茶の緑部屋障子(しょうじ) 9)坪庭へ曙光…

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12月の俳句帳(128)令和五年12月27日

1)杭に載る川の日溜まり鴨数羽 2)枝蜜柑食い尽くされて庭閑(しず)か 3)川風に鳥撮るカメラ悴(かじか)む手 4)櫨(はぜ)の実や灯る行灯(あんどん)仄明かり 5)外濠の夕景描く鴨の二羽 6)川瀬音鷺足歩み稚魚咥(くわ)う 7)木漏れ日の斑(まだら)障子に京町家 8)黄落を受けて夕陽のきら光る 9)伊吹より翔び来る川辺笹鳴きて 10)夜もす…

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11月の俳句帳(127)令和五年11月30日

1)声明(しょうみょう)に沁みる余韻や秋思湧き 2)昏厨(くらくりや)果実酒瓶と酸橘(すだち)二個 3)白紋を染めし羽織の門鶲(ひたき) 4)動かざる鎌振り上げし枯れ蟷螂(とうろう) 5)落柿舎(らくししゃ)の庭に筧や添水(そうず)鳴り 6)壺庭の磨く蹲踞(つくばい)水澄めり 7)庭暗し酸橘たわわに黄の明かり 8)川散歩一重(ひとへ)脱ぎたる小春かな …

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10月の俳句帳(126)令和五年10月30日

1)草木染め夜なべの土間で砧(きぬた)打つ 2)鶲(ひたき)啼く斑鳩(いかるが)響く法隆寺 3)陽射し岸視界飛び込む黄鶺鴒(きせきれい) 4)秋翡翠(ひすい)川面ターンで残る蒼 5)未だ残る稲架(はざ)掛け日干し里棚田 6)お釜載せ里の竈(かまど)の零余子(むかご)飯 7)秋雨や甍(いらか)打つ音野辺の夜 8)弦の音に咽(むせ)ぶ秋霖(しゅうりん)ショパ…

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9月の俳句帳(125)令和五年9月29日

1)川瀬立ち仔鷺(こさぎ)餌(え)を待つ暮れる秋 2)けふも又餌(え)待つ仔鷺吹く素風(そふう) 3)独り立ち見届く鳥の秋の川 4)見守りて競(きそ)う堀川秋翡翠(あきひすい) 5)銀やんま縄張り守り川面(かわも)翔ぶ 6)秋雷で泡立つ水面(みなも)背びれ跳ね 7)尾を叩き四回(しかい)水面に産む蜻蜓(やんま) 8)店先に鈴虫の鳴く京町家 9)聞香…

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8月の俳句帳(124)令和五年8月31日

1)銀鱗の燦めく川面(かわも)水の秋 2)山頂より棚田降下秋茜(あきあかね) 3)山寺の梵鐘(ぼんしょう)途絶え虫の声 4)堀川の水ホバリング銀やんま 5)夜の庭炎夏よ去れとちちろ啼く 6)打ち水の坪庭凜(りん)と静まれリ 7)青柚(あおゆ)軸ぬるめ煎茶(せんちゃ)の赤絵碗 8)雨後の寺苔滴(したた)りて風を呼ぶ 9)山寺の筧(かけい)さらさら風の…

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7月の俳句帳(123)令和五年7月31日

1)桟(さん)ずらし風の取り入れ夏障子(しょうじ) 2)地蔵道(みち)浴衣(ゆかた)に下駄の似合う里 3)草木染め淡色涼し竿に干す 4)雷雲や一雨欲しき萎(しお)れ庭 5)古寺(こじ)羅漢(らかん)炎天耐へて顔の笑み 6)初蝉や並木散歩の雨上がり 7)緑陰(りょくいん)のトンネル過ぎて鳥の声 8)炎帝を避けて物陰外歩き 9)海渡るアサギマダラの旅の…

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6月の俳句帳(122)令和5年6月30日

1)蒼き音渓流を染め苔茂る 2)せせらぎや鮎の友釣り竿の先 3)竹林を抜けて廃線揚羽行く 4)藍染めの手拭い止まる青蜻蛉(あおとんぼ) 5)清流に揺れる水草糸とんぼ 6)琵琶(びわ)哀し耳無し芳一螢墓 7)ほんのりと足湯温(ぬく)まる青鷺湯 8)青葦(あし)の雀(すずめ)夕宿かしましき 9)陽射し岸塩辛蜻蛉色眼鏡 10)甲高(かんだか)き啼き…

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五月の俳句帳(121)令和五年5月31日

1)坪庭の前の座卓や新茶の香 2)箱根八里馬鈴(ばれい)聴く初夏街道図 3)釜飯や浅蜊(あさり)たかんな友集う 4)草笛に寄り添う調べ川瀬音 5)清流や萌ゆる水草青葉風 6)並木雨夜目(よめ)に灯す黄(き)金糸梅 7)群れ盛る灯心岸辺火を灯す  灯心=糸とんぼ 8)森奥にゆらりマントの黒揚羽 9)川杭に残像を遺す青翡翠 10)老鶯の声を合図に…

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四月の俳句帳(120)令和五年4月29日

1)和蠟燭(ろうそく)蝶呼ぶ灯り鄙(ひな)の宿 2)山奥の清明な空過疎の里 3)古民家の敷居の段差春カフェ 4)春霖(しゅんりん)やヴィバルデイを聴く庭座敷 5)陶皿を鳴らす雨音春時雨 6)木の芽雨萌葱(もえぎ)の並木観て歩く 7)穀雨来る南高実梅鈴なりに 8)柑橘の花芽累累(るいるい)穀雨庭 9)選挙戦終わりて川辺花筏(いかだ) 10)春愁…

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三月の俳句帳(119)令和五年3月30日

1)早蕨(さわらび)と名歌詠みたる老舗(しにせ)菓子 2)北窓を開き蠟燭(ろうそく)薄明かり 3)花筏(いかだ)染井の栄華移ろいて 4)春光に御堂(みどう)の柱木目仏 5)川蛇行春光受けて耀(かがよ)いぬ 6)橋袂(たもと)飛び出す翡翠(ひすい)光る風 7)遡上(そじょう)ぼらぽちぽち海へ水温む 8)雨濠辺初音を洩らす白繁み 9)南高の白梅群れる白…

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2月の俳句帳(118)令和五年2月27日

1)朝散歩小枝呼ぶ止む冬並木 2)棟上げや春の足音杵の音 3)浮御堂窓辺ぼんやり春灯し 4)薄氷(うすらい)の溶け行く池に浮御堂 5)声明(しょうみょう)や唸りに春の声灯り 6)庭鶯(うぐいす)機敏なれど音(ね)の洩れず 7)料峭や尿意の切迫道川辺 8)料峭(りょうしょう)を浴びて涙目並木坂 9)ぼらの遡上鷺・人集う春の川 10)方丈の鬼目柱…

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1月の俳句帳(117)令和五年1月30日

1)遡上川電光石火の寒翡翠 2)閑寂や添水唐臼冬陽落つ 3)銀鈴を川面に遺し寒翡翠 4)山茶花の蜜吸う鳥や鄙(ひな)の寺 5)京町家障子仄かに人の影 6)冬の園日溜まり集ふ猫会議 7)輪島塗屠蘇器寿ぐ三が日 8)ラジオより謡曲の節淑気帯ぶ 9)鉄瓶の沸きて初釜集ふ声 10)河豚(ふぐ)店の筧(かけい)と蹲踞(つくばい)壺の庭 11)皿て…

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12月の俳句帳(116)令和四年12月29日

1)黒ジョカの割り水炭火(すみび)舌に滋味 2)チョコを手にオールド・パーで酌む聖夜 3)文旦酒(ぶんたんしゅ)仕込む塩梅(あんばい)日の短(ひのみじか) 4)燗ぬる目「獺祭」(だっさい)吟味で歳送る 5)凍て月の耿耿(こうこう)照らすウクライナ 6)昏鐘のおちこち伝播(でんぱ)谷凍る 7)弦楽の揺らぎに魅惑月冴ゆる 8)禰宜(ねぎ)歩く下駄音澄みし冬の…

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11月の俳句帳(115)令和四年11月29日

1)北斎の大浪(おおなみ)漕ぎて冬支度 2)声明(しょうみょう)や谿(たに)への木霊(こだま)冬に入る 3)苦悩より添水唐臼(そうずからうす)夕陽落つ 4)コロナ禍に併(あわ)せ円高吹く凩(こがらし) 5)雄蟷螂(とうろう)目合(まぐわい)逐えて喰われけり 6)露地奥は行き止まりなり秋の暮れ 7)月蝕や話題かしまし秋夕餉(ゆうげ) 8)畳み目に茶道の所作…

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10月の俳句帳(114)令和四年10月31日

1)ぐい飲みを蕎麦猪口(ちょこ)として秋夕餉 2)川散歩しばし浮遊の銀蜻蜓(やんま) 3)そよ風に蝶道の翅(はね)紅葉(もみじ)色 4)盆栽の枝くね曲がる老いの秋 5)家猫の近づく寝床うすら寒 6)掛けマスク通し香(か)を聞く金木犀 7)名古屋城菊花展を観に行かん 8)秋桜(コスモス)や百恵の唄が蘇(よみがへ)る 9)皮むきし茹で衣被(きぬかつぎ)…

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9月の俳句帳(113)令和四年9月29日

1)清流の行く先一軒鄙(ひな)の秋 2)秋の蚊に燐寸(マッチ)で線香庭戸口 3)客人を迎へる座敷茶立て虫 4)落ちる葉の舞ふが如き飛ぶ秋蝶 5)空澄みて欄干の群れ朱く翔ぶ 6)蒼輝る鱗翅の一頭庭の秋 7)さらさらと色無き風の竹林 8)藍白の空へ満月二階窓 9)水泡を立ててかわせみ秋の川 10)周回の玻璃(はり)の眼飛行川の秋 11)晩酌…

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8月の俳句帳(112)令和四年8月29日

1)どぜう汁(泥鰌汁)誘(いざな)ふ老舗(しにせ)の縄暖簾(なわのれん) 2)秋澄めば渉(わた)る小鷺の川瀬音 3)ひまわりに止まる蝶撃つロシア兵 4)水盤の門扉(もんぴ)へギョロ目の低飛行 5)茂みよりゆらり翔び立つ黒扇(おうぎ) 6)お銭(あし)増(ふ)ゆ蟇口(がまぐち)収む蛇の殼(から) 7)灯の涼し庭の龕灯(がんどう)通り雨 8)風呂上がり藍染め…