好景気とはマネーの循環がよい状態で、不況はその逆です。
中央銀行はマネーが詰まってくると市中から有価証券を買い上げて、通貨を放出します(買いオペレーション)。
すると、マネーの流れが出来て、金利が下がり、好況になります。
十数年前の(不動産)バブルの時代は過剰流動性といって、あまりにもマネーが溢れていたので皆が挙ってマネーを使った状態でした。
それを止めるには、個人のレベルでいえば財布の紐を締めることに尽きます。
しかし、国民は浮かれてしまって、その状態がいつまでも続くと思いました。
中央銀行はプラザ合意による金利政策をもう少し早く転換し、バブルを止めることは出来たのですが、時の政権はそれによって潤っている人たちの味方をしてブレーキを掛けなかったのです。
挙句に、全速力で走っている人にシャワーを浴びせるならともかく氷水の中に浸けたのです。いわゆる総量規制というやつです。
結局、バブル放置の付けが回って、回復までに10年掛かり、失われた10年と言われました。
今回の金融不況はゴミを宝と言って世界にばら撒いたのが原因ですが、その過程では証券化商品を扱った人たちには莫大な利得をもたらしました。
結果として、企業は潰れましたが経営者や社員には日本人では信じられないほどの資産が構築できました。
法の下では人である会社と個人は別、をいいことに、暴利をむさぼったのです。
とにかく、缶拾いで暮らしている人にも、SUVなどの高価な車を買わせた、返済できるわけがないのに書類を偽造して貸し込んだと言うか、売り込んだ。
貸す側と売る側が資本が一つだからどうにでもなった。
また、株価が高値にあるときに貸借取引の「売り」を仕掛けて暴落で利益を得た。
ゴミを宝と言いくるめて回る社会がいつまでも続くわけはないことは誰でも分かります。
だから、その人たちは「売り手」になったのです。
ところが、日本人はどう考えたかです。
例えばトヨタ自動車。
強気の見通しで増産計画に拍車を掛けた。
まったく、何も見えていなかった。
中学生でも分かる理屈が、俊英を集めているはずの経営者の誰も理解できなかった。
この場合、騙す方が悪いのかそれとも騙される方が悪いのかだ。
一般化しては何だが、騙す方と騙される方の「欲」は同じだと私は考える。そのベクトルが外を向くか内を向くかの違いだけだと思う。
近郊に、増産計画に乗せられて昨年秋に自動車部品の新工場を建てた会社がある。
現金で社屋を建てる人はないだろうから。かなりの借金を負っただろう。先日通った時にはその会社に人の気配がなかった。
親会社の言うがままに全速力で走ってきた会社が、新社屋を建てるのを待っていたかのように仕事が激減ではなす術はない。
意向に背けば、今まで請けていた仕事を丸ごと他社に移される懸念がある。
大会社の中には警鐘を鳴らす者もいたはずだが、行け行けどんどんの雰囲気の会社では発言者はスポイルされただろう。図式としてはみんなで渡れば怖くない、寄らば大樹の例えどおりだ。極めて日本的だ。
今回の苦境から少しでも早く脱却できることを望むが、今までの景気循環とは異なる様相なのが気に掛かる。
従来の好景気不景気は景気循環なので何の心配も要らなかった。
外需依存の日本は他国に先駆けて回復することはない。もしかしたら、まだトンネルの入り口に入ったばかりかもしれない。
論点があちこちしましたが、結論としては景気循環と今回の金融危機とは別物であるということです。
現在は世界の総需要が落ちてしまっているので、急激な需要回復には一つしか方法がない。
最悪の方法ですが…
金融不況を企てた強欲資本主義者はこうなることを予見できないことはない。
世界は誰が動かしているのであろうか。