青空に熟柿の樹が枝広げ



 熟れ柿に匙が添えられゐたりけり  高澤良一 石鏡

 熟れ柿に色休まする深曇  林 翔

 熟れ柿のどこにどう刃を入れようか  伊藤伊那男

 熟れ柿の甘きをすすり血を荒らす  伊藤白潮

 熟れ柿の梢に伸ばす長梯子  石川文子

 熟れ柿の正体もなく日に酔うて  高澤良一 さざなみやつこ

 熟れ柿や俗気盛んな僧来たる  ふけとしこ 鎌の刃

 熟れ柿を剥くたよりなき刃先かな  時彦

 熟れ柿を溜め若者の消えし村  吉田舟水

 熟柿が旨い人の疼きが洩れてくる  飯土井富美恵

 熟柿すすり珠のごとくに夜の刻  金子篤子

 熟柿つつく鴉が腐肉