甲板に月を見上げて逍遥す


 初霜のデッキ味噌汁匂ひ来し  鴨下秀峰

 人動きやまずよ海霧の甲板に  高浜虚子

 水さはに甲板掃除五月かな  染谷彩雲(渋柿)

 水夫の瞳デッキに碧く雨ふれり  滑川春蕾

 星涼し遊歩甲板の籐椅子に  岸風三楼 往来

 青年海猫ヘパン投ぐ雪がつどうデッキ  古沢太穂 火雲

 船乗のデッキに見つむ陸萌ゆる  下田稔

 船足も軽くデッキに桃の籠  川崎展宏

 台風去る上甲板の綱にわれ  渡邊白泉

 男の横顔デッキに港初日さす  古沢太穂

 朝霧やおなじ日向に甲板と陸  加倉井秋を 午後の窓

 島離りゆく甲板に蜻蛉とぶ  清崎敏郎