蒼々と月に照らされ深雪の夜 



 おのづからよき声の出て深雪晴  能村登四郎

 しんとして深雪の視野のあるばかり  加藤秋邨

 そこここと網倉見ゆる深雪かな  阿波野青畝

 きさらぎや深雪に沈む林檎園  福田蓼汀 山火

 夜の深雪ただしんしんと降り積もる  アロマ

 酌めば茶のすぐにさめたる深雪かな  鈴木真砂女

 大雪や母の点つ茶の泡みどり  大野林火

 竹垣にひそむ雉子の眸深雪晴れ  廣瀬直人 帰路

 踏切の灯を見る窓の深雪かな  飯田蛇笏

 二十五年目といふ大雪に降られたる  細見綾子

 鰤の尾に大雪つもる海女の宿  前田普羅 能登蒼し

 庭におく深雪