冬のグラス

『元気だったみたいだね』
『まあね』
『飲んでるね』
『暮れからだから、ずっと酔ってるわ』
『俺は、今日は、まだ飲んでない』
『じゃあ、これからね』
『そう、君の声を肴にかな』
『こんなガラガラ声で、いいのかしら」
『ハスキーボイスは、冷たいグラスに、よく響くんだよ」
『なんか、変な理屈だけど、じゃあ、今から、あの歌、歌おうかな』
『そうくると思ってたんだ』
ふたりには、想い出の歌があるのだろう。
グラスが、冬の夜に、静かになっているようだ。

カテゴリ:アート・文化