古仏の話Ⅴ - 東大寺法華堂 不空羂索観音像② 掌中の珠 -


前回の話題でご紹介した東大寺法華堂の不空羂索観音像に関するもう一つの話題です。
不空羂索観音像の合掌する掌の間には、直径3cmほどの水晶の珠が挟み込まれています。この水晶宝珠は、美術史家の川瀬由照氏が『国宝の美』(2009年8月23日)の中で、「宝珠は後に嵌められた可能性もあり」と述べておられ、明治になってから合掌する手の間に嵌められたものであるとする説があります。

平成22年から23年にかけて行われた修理の際、宝冠の下部に見える三つの小蓮台に、元は水晶珠が嵌められていたことが判明しています。そこで浮上したのが、美術史家の浅井和春氏が主張した、明治3