アキ*さん
【名古屋市美術館】『福田美蘭 ― 美術って、なに?』を鑑賞する会
展覧会ポスターのメインビジュアルが「うな重」だったし、チラシに掲載されていた他の作品を見ただけでは正直、期待値はそれほど高くありませんでした。
でも感情を揺さぶられたという意味でなら、今年観た展覧会ではベスト1。中でも一目見てからの数秒間、徐々に瞼の裏側が潤んできた作品が『悲母観音』。狩野芳崖の代表作でオリジナルでは、足元に浮かぶ赤子を慈愛を込めた表情で見下ろす天空の観音様が描かれています。信心深くない私でもおだやかな気分にさせてくれる芳崖の最高傑作。
そしてその福田美蘭バージョンでは足元にいた赤子を観音様が胸元に抱き抱える姿にアレンジされており、眼下に広がるのは東日本大震災に見舞われた後の東北の大地。命を描くというのはこういうことなのかと胸が熱くなりました。
もう一点は、亡くなられたお祖父様の姿を描いた『涅槃図』。オリジナルでは大きく横たわる死後のお釈迦様が描かれていて宗教画としても有名な作品です。美蘭さんにとって大切だった人の死を題材にした作品ですが、ほほえましさが満ちてくる不思議で大好きな作品でした。
展覧会では写真や名画をモチーフに新たな視点や発想力で再構築することが美蘭さんの制作スタイルだと知ることができましたが、それは圧倒的な画力があってこそなせる技。まだまだお若いのでこれから描かれる作品にも注目していきたいアーチストです。
鑑賞後のランチですが、とても静かなお店だったしみなさんとの会話もゆっくり楽しめたので、よかったのかなぁと思っています。参加されたみなさん、ありがとうございました。