《三ノ輪・千束レポ》凛とした菩薩のまなざし

 吉原弁財天の観音像は、風にたゆたう羽衣をまとっていました。まるで雲に乗って空から舞い降りてきたかのような姿です。ふっくらとして優しい表情ですが、目だけは何かを訴えているように凛として見えました。この菩薩が築山の上に立ち現れたのは大正15年のことです。
 なぜ、このような凛々しい立像が住宅街の片隅に佇んでいるのか。その起因は、大正12年(1923年)9月1日・午前11時58分に発生した関東大震災にあります。
 今からおよそ100年前、吉原の悲劇で亡くなった人々の魂を鎮めるために観世音菩薩はずっと立ち尽くしています。

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