《四谷・荒木町レポ》石畳の下駄の音

 窪地の坂道には御影石で作られた段差の小さい階段があり、すでに現役を引退した古惚けた街灯が立っていました。なだらかな坂に階段は不要だろうし、明かりを灯さない街灯など無用の長物のはず。坂を下ると、こちらにも御影石を敷き詰めた細道が続いていました。デコボコとして決して歩きやすいとは言えません。
 しかし、それらは敗戦国の日本が経済大国に成長していく時代に、この町もまた華やかだったことを物語る貴重な遺構です。
 一段一段を小さくし、下駄でも歩きやすいようにと作られた花街階段。その足元を照らした薄明りの街灯。雨の日に泥はねがないようにと、都電のレールを支えていた