新入懇親会の夜

 初めての下宿は賄いつきだった。地方の片田舎から出てきたばかりのような娘さんが二人働いていて、食事と掃除の世話をしていた。旅館のように中庭のある建物で部屋数も多く多人数が利用していたから、今では死語になった「女中さん」のような存在が必要だったのだ。汁椀の内側に親指を入れて配膳してくるのが厭で、同期に入った友人と夏休みには下宿を移ったから、その二人の娘さんのことは詳しく知らないし思い出したこともない。二人の娘さんだけでなく下宿そのものも思い出したりしない。
 それがこないだコミックを読んでいたら「ヤクザ」が出てきて訳もなくふと思い出したのだ。新入歓迎会とい