〝オペラよもやま話〟

 カルーゾーが死んだ。1921年8月2日、48歳の名テノールは肋膜炎で天に召されたのだ。困ったのはメトである。

 ’03年11月のデビュー以来18年間のうち、ファラーのデビュー公演に譲った06年だけを除いて、カルーゾーは毎年のメトでのシーズン開幕公演を歌っていた。彼の亡い今、誰にそれを任せるのか。

 その人物こそ、今後のメトの中心となる歌手でなければならない。そして21年11月14日、ポスト・カルーゾー最初の開幕の日が来た。演目は『椿姫』。主役ヴィオレッタはこの日がメト・デビューのコロラトゥーラ、38歳のアメリタ・ガッリ=クルチ。

 この日はジーリ