〝国立歌劇場のプレミエ〟

 ベルリン国立歌劇場におけるコロナ規制緩和後の最初の有観客プレミエはモーツァルトの『コジ・ファン・トゥッテ』だった。指揮はバレンボイム、演出はシェローの元アシスタント、ヴァンサン・ユゲである。

 この公演、何を間違ったのか、恐ろしく面白くない結果に終わってしまった。演出は今時のフツーの仕立てで、登場人物は現代人の格好をして出てくるが、それ以上に「読み」がない。

 フィオルディリーやドラベッラがどのような人物であるかがまったく描けていないし、そもそも描こうとしていないのである。そのため歌手が勝手に演じることになり、6つの糸の切れた凧が舞台をさまよってい