〝不満が残ったMETの新制作『リゴレット』〟

 メトロポリタン・オペラが8年振りにヴェルディ『リゴレット』を新制作上演した(12月31日初日)。2019年を最後に葬り去られたマイケル・メイヤー演出の1960年代のラスヴェガスを舞台にした惨めなプロダクションに比べたら、どんな演出でも著しい改善になると思われる。

 実際のところニューヨーク・タイムズ紙は、バートレット・シャーによる今回の演出の初日公演に、いくらか苦言を呈しながらもほぼ絶賛の批評を寄せた。しかしながら、大喜びの観客の熱狂と反比例するかのように、批評家の多くが首をかしげざるを得ない公演に思われたようだ。

 シャーは時代設定を、原作の退廃