村上春樹「アフターダーク」を読んで「語り手」について考えた その1

すべての小説は一人称小説と三人称小説とに分かれる。(このほかに二人称小説というものが存在するが、私見によればこれは一人称小説の一つのバリエーションに過ぎない。)

小説以外のテキスト(文章)は、たとえば手紙、日記、エッセイなど、これらは「わたしが見たこと、聴いたこと、経験したこと、行動したこと、感じたこと、考えたこと」などから構成されていて、当たり前だけど、一人称で書かれている。

だから、一人称小説はこれらの延長で考えれば、ごく自然な形態である。ただ、事実が虚構になっている点だけが違うだけだ。

しかし、三人称小説は、考えてみればそれほど単純ではない。