有島武郎と「遠友夜学校」

栗田廣美著『死と飛躍・有島武郎の青春〈優等生〉からの離脱』右文書院刊、読了。
 この本は著者の修士論文や学位論文『有島武郎研究―青年期の精神史的展開を軸として』など鹿児島短期大学研究紀要に寄せた数々の旧稿を下敷きに書き下ろしたもので、422頁のボリュームだが、今日の午後だけで読み流したので私の理解はすこぶる浅い。

 有島武郎は、明治維新で成り上がった特権階級の大切な跡取り息子であった。父・武は、薩摩北郷家(島津氏支族)家臣の家に生まれたが、その父(武郎の祖父)が「お家騒動に連座」して流罪に処せられたため、少年期の悲惨さは「苛烈を極めた」。それを耐え抜き