序破急

【序】
 ある人 曰く
 再発末期の宣告は あと半年ありやなしやと
 金も地位も モノも女も美味いもんも
 命の糧には もう何もござらぬ

【破】
  目覚めた朝の 一日の命
  見つつ聞きつつ 嗅いで味わい
  触れては わが余命を意(おも)う
  「まだ役に立つ」 その役を生きよう

  替わるものなき 今日の一日
  こみ上げる この感動と感謝が
  まさか「利他」に 連鎖しようとは
  わが心 夢にも思わず……という

【急】
  「利他行」とは 行なくばその発心無し
  あわれなるかな 所詮は他人事か
  消ゆる命の 血管(ちくだ)脈打ち