「大君の仰せに従って、山越え坂道を越えてやっと、鄙のこの国に来たのに、ひどい大病にかかって倒れ込んでしまうとは…」
という悲傷きわまる長歌と、次のような短歌を詠む家持でした。
・ 世間(ヨノナカ)は 数なきものか 春花の 散りのまが ひに 死ぬべき思へば 巻17・3963 大伴家持
〜 人の世というものは、何とつまらぬものか、春の花が散りまがうように、儚く私も死ぬのであろうか。
弟、書持の死からまだ半年のことであり、家持の脳裏には、先年おきた、藤原四兄弟が病気で次々に死んだ怖い事件が、浮かんでは消えるのでした。
夢の中に出てきて父の