百合の花を喩(ユ・たとえ)に、忘れられぬ妻を恋う 防人(サキモリ)の歌です。
・ 筑波嶺(ツクバネ)の さ百合(サユル)の花の 夜床(ユドコ)にも 愛(カナ)しけ妹そ 昼も愛しけ
巻二十・4369 大舎人部千文(オホトネリベノチフミ)
( 筑波の嶺に美しく咲き匂っていた百合の花のように、共寝した夜床の中でも愛おしい妻は、昼間も可憐で堪らなく、<片時も、忘れることが出来ない>)
作者は常陸(ヒタチ)国出身の若者のため随所に地方の訛りがありますが、青年の素朴な感情が露わに詠われて、興を惹きます。 防人に任じられることは時により永久のお分かれを