無人駅ひらりと二片桜舞う


   

   「アロマ」の句


 川の上入道雲はむくむくと

 塩鮭一尾貰いて詮方なく

 禅寺の縁に腰掛けお薄飲む

 三段峡せせらぎ碧く紅葉して

 無人駅ひらりと二片桜舞う

 蕎麦処鹿駆ける山肌を見て

 振袖長く初春華やいで

 神無月朱の振袖に黒い帯

 リラ冷えの街に紫コート着て

 旅先のホームに遠く竹の秋


   「山口誓子」の句


 やさしさは殻透くばかり蝸牛

 陽炎が鉄路の果を見せしめず

 春暁の此岸彼岸自転車ゆく

 オリオンが枯木にひかる宵のほど

 秋風に嬰児ひとりうらがへる

 夜に着きし海辺ぞ凍てし鶴のこゑ