『胡蝶の夢』や荘子の「逍遥遊」

 木々の芽に春分の日の雨軽し  市ヶ谷洋子

 春分の日をやはらかくひとりかな  山田みづえ 木語

 彼岸中日は昨日となりしを雪が降る  細見綾子

 天高し町のポストに蝶もつれ  皆吉爽雨

 子は遠くつぶらまばらの高原蝶  中村明子

  子抱への教師に蝶の身軽さよ   楠節子

  学卒へし小さきことと蝶のこと  古舘曹人 能登の蛙

 学園に自動の遊蝶他動のデモ  香西照雄 素心

 宇陀郡室生村蝶生れけり 安住敦

 宮島の干潟の蝶と別れけり  萩原麦草 麦嵐

 後宮の朱柱に倚れば蝶の夢  鍵和田釉子

  御柱落とす地点へ白き蝶