シェルブールの雨傘 ~ それぞれに掴んだ幸せ

この映画の大きな特徴は全編を通して流れるミシェル・ルグランの甘美で抒情的かつ、流麗だが、やや荘重な音楽にすべてのセリフがそれに絶妙に乗る、極めて異例な音楽劇であること、それが非アメリカ的で観る者の心に抵抗なく滑り込んでくることとである。さらに当時、はたちくらいのジュヌヴィエーブ ( ドヌーブ ) の瑞々しく、やや幼さの残る初々しさにも注目してよい。余談だが後にギィと結婚するマドレーヌにこそドヌーブを凌ぐ大人の魅力が垣間見られる。もう一つ注目していただきたいことは映像処理の見事さである。ピンクや赤 ( 場面によっては薄いブルー ) を主に淡くソフトな色調を