ヘッドライト ( ジャン・ギャバン )

人生の労苦と悲哀にうちひしがれ、苦労の辛酸を嘗め尽くし、それを額に刻んで生きてきた役柄を演じさせたらジャン・ギャバンの右に出る者はいないのではないか。ふとした演技の瞬間にそれが何気なく、ごく自然に表れる。勿論、彼の演技はそれにとどまらず、他のどのような役を演じてもそれを見事にこなしてしまう。そこがジャン・ギャバンのすごいところだと思う。この作品では初老のトラック運転手として仕事をしてゆくうちに、また冷たく暗い家庭に生きていくことによって、鬱積した不満や苦悩から、今流に言へばブラックドライブインでけなげに働くクロチルド ( フランソワーズ・アルヌール )