春宵に辛夷咲き仄か夕映え

 秋の夜やインク足したるインク壺  鈴木真砂女

 春は何か遠くてインクすぐ滲む  岡本眸

 雪の夜のインク瓶より海の音  高野ムツオ 鳥柱

 壷白くインクは冬の灯を吸へる  富澤赤黄男

 夕刊のインクの中の福禄寿  曾根毅
 
 朧夜や青いインクで手紙書く  大坪芙美子

 梅雨寒やインクは碧と決めている  川崎洋子

 デッサンのコンテの先にある冬日  上村占魚

 水墨の牡丹の中の牡丹色  銀林晴生

 水墨の山あるごとし秋の暮  長谷川櫂 虚空

 秋涼や墨絵となりぬ相模湾  落合柊子

 春みぞれ墨絵の里は昼灯し  勝村茂美

 墨絵へと