儚げに彷徨う如く糸蜻蛉 

 棟上げの写る水田の糸蜻蛉  高田里江

 糸とんぼ放ちし羽根に風あたる  桜井博道 海上

 鐘撞きに行くとは知らじ糸とんぼ  永田耕衣

 生れたるばかりに吹かれ糸とんぼ  稲畑汀子

 煙草盆までとうすみの来ることも  波多野爽波

 池にごりそめて生れし糸とんぼ  稲畑汀子

 暁紅の忘れ形見の糸とんぼ  佐藤鬼房

 糸蜻蛉淡き水色川に飛ぶ  アロマ

 ほほゑみをつくすとうすみとんぼの岸  飯島晴子

 止まらんと瑠璃糸とんぼ間合詰め  高澤良一 燕音

 三人は友となるかも糸蜻蛉  落合よう子

  二歳児に捕らえられたる糸蜻蛉  摂待信子