堂庭

 村の真ん中にある小さなお堂は、大きな岩の上に立っていた。だから子供たちにとって岩登りの冒険が手軽にできる格好の遊び場だった。お堂の傍に「堂庭」と呼ばれる家があって、戦争未亡人が一人で暮らしていた。子供たちがどんな悪さをしても、その人は決して大きな声で叱ることはなかった。寒い秋の夕暮れには、遅くまで遊んでいる子供らに、「いい塩梅にお風呂が沸いたから、温まってらっしゃいな。」と声をかけた。恐る恐るその家の玄関に向かうと、「さあどうぞ、お風呂にお入りなさい。」といってニコニコ笑うのだった。お風呂から出ると、囲炉裏にかけた鍋からキノコ汁をお椀に盛って子供たちに