麺太くコロッケ載せた醤油蕎麦

 襷して割箸を割る三十日蕎麦  阿波野青畝

 見下ろして見上げてみても蕎麦畑  清崎敏郎

 貧の友娶る一人や蕎麦の秋  河東碧梧桐

 逝く秋や深大寺蕎麦このたびも  星野麥丘人

 運び来しホテルの年越蕎麦ひとつ  桂信子 草影

 郭公や戸隠に来て蕎麦嫌ひ  及川貞 夕焼

 重陽の四山の雲に蕎麦を打つ  水原秋櫻子 霜林

 釣堀に出前の蕎麦の届きけり  安住敦

 陣馬山人蕎麦打ちくれぬ梅雨明けぬ  水原秋櫻子 蘆雁以後

 除幕式まで惜春の蕎麦を食ふ  能村登四郎

 雁やけふはなやぎし蕎麦の紅  石田波郷

 雪国や蕎麦きしきしと昼の酒