美祢線の旧きトンネル潜り抜け

 麦秋の汽車に鎧戸ありし日よ  狩行

 麦刈の若きは汽車にそむき立てり  原田種茅 径

 麦の芽に汽車の煙のさはり消ゆ  中村汀女

 麦に伸び花菜に縮み汽車すすむ  京極杞陽

 薄暮れぬ野末に汽車の走る音  正岡子規

 薄氷をとかす太陽わが汽車行く  中山純子

 薄給や汽車のスチームに足掛けて  猿橋統流子

 白墨の汽車昏れ遠いわが啄木  森武司

 白南風や汽車尾を振つて海に沿ふ  若林芳樹

 白桃の紅らむ頃を夜汽車かな  鳴戸奈菜

 白魚火を見たるその夜の汽車に乗る  大峯あきら

 萩の丘下に汽車つき電車去る  銀漢 吉岡禅寺洞