無人駅山陰線の花吹雪

 甘藷の貨車出勤の踏切断ちぬ  原田種茅 径

 閑な市電尻ふり早春の運河沿いに  赤城さかえ

 雁や市電待つにも人跼み  大野林火

 顔過ぐる機関車の灼け旅はじまる  橋本多佳子

 旗に風ある都電を見しや羽抜鶏  磯貝碧蹄館 握手

 機関車が止まり秩父の百目柿  辻 男行

 機関車が止まる蟋蟀の声の上  的野 雄

 機関車にかこまれ濡るる東風の靴  宮武寒々 朱卓

 機関車に雲や鴉や秋の山  飯田蛇笏 霊芝

 機関車に試乗し燈下春惜しむ  宮武寒々 朱卓

 機関車に助手穂芒を弄ぶ  山口誓子

 機関車をねむらせている青田風  穴井太