蛍烏賊越前の宿にて食しおり  

  ≪冷え込んだせいで風邪を引いた

   背中がぞくぞく ≫


 さびしさが焼きころがして蛍烏賊  能村登四郎

 そのかみの荒磯の海や蛍烏賊  深井きよし

 蛍烏賊甘えび当時珍しく  アロマ

 まつくらな海へ見にゆく螢烏賊  深見けん二

 光るまま網ですくはれ蛍烏賊  吉川康子

 川水を恋ふとはあはれ螢烏賊  高野素十

 掌にのせてつくづく蛍烏賊を見る  高木晴子

 晩年の旅蛍烏賊歯になじむ  青木よしを

 橋くもる日の深皿の蛍烏賊  渋谷道

 波の穂の段なすひかり蛍烏賊  福山志づ

 灯を慕ひきては汲まるゝ蛍烏賊  堺井浮堂