その一日思えば遠く来たりけり


 さなぶりの宴一日つづきをり  岸下庄二

 さみどりの病魔を一日連れ歩く  栗林千津

 しぐれ気のなうて一日小春かな  路通

 しはしはと紙子の中の一日かな  加藤秋邨

 しろばえとプール一日北に駛す  山口誓子

 せきたてることなき一日返り花  鷹羽狩行

 セルを着て手足さみしき一日かな  大野林火

 セル軽し書屋を出でぬ一日あり  深川正一郎

 たかんなの一日の長ゆづらざる  八染藍子

 ただ一日ゆるす懶惰に冴返る  林翔 和紙

 窓際に懶(ものう)く過ごす春の日よ  アロマ

 ただ焼土を運び一日の仕事なり  秋山秋紅蓼