桜と雀

咲いたばかりなのに、もう散りはじめている。みんなにあれだけ待ち望まれて咲いたのだから、もうすこし咲いていてくれてもいいだろうに、と朝からブツブツ。

あるきながらブツブツ言うのは歳をとった証拠だからと、ブツブツを必死に飲み込んでいると、散りはじめた桜のはなびらの様子がすこしおかしいことに気づく。

花弁まるごと、あっちこっちに散っている。まるで椿のように。散る、というより「落ちている」のだ。

雀の仕業らしい、と物知りが言った。メジロやヒヨドリは花弁のまん中に嘴を突っ込んで蜜が吸えるが、くちばしの構造が彼らとは異なる雀は花弁をちぎって下から蜜を吸おうとす