物憂くも紫陽花を描く昼下がり



 碑に恋唄紫陽花まだ蕾  小池龍渓子

 紫陽花や古戸十枚戸袋に 野村喜舟

  紫陽花や土間ひんやりと茶漬店 行廣すみ女

  紫陽花や墨も匂はず弔句書く 皆吉爽雨 泉声
 
  紫陽花や夢の男の嗄れ声 夏井いつき

  紫陽花や大きな夢はばらばらに 加藤楸邨

  紫陽花や夫を亡くする友おほく 竹下しづの女 [はやて]

 紫陽花や女神穴居す逆立ちす 竹中 宏

 紫陽花や女米磨ぐ井戸のへり 寺田寅彦

 紫陽花や子を生み終へし高いびき 岩田由美

  紫陽花や家居の腕に腕時計   波多野爽波 『湯呑』

 紫陽花