父親の夢を見た

父親はすでに他界している。最後の数年間は認知症だった。認知症が軽いときは、お前たちのことだけは忘れないと言っていたが、認知症が進むにつれて子供や妻のこともわからなくなっていった父だった。

高校生ぐらいの頃からは親しく話す機会も少なくなった父親だった。

夢のなかで、自分と父親が肩をならべて道を歩いていた。父親は穏やかに笑っていて、何か話しかけてくるのだが、なぜか聞き取れない。声が音にならないのだ。しばらく歩くと、わきに桜が咲いている場所が見えてきた。

桜の花が散り始めていると思ったら、花ではなくたくさんの蝶が舞っていた。父親は、もっと奥に行こうという