北原白秋の詩


 <月に飛ぶもの> 
                 北原白秋

   
  月の光がさしました
  枯れた葡萄に
  日時計に

    月の燻[いぶ]しになりました
  ちらばる色も
  縫ふ影も

    月に消え消え飛ぶものよ
  ほの紫の
  連れ鳥よ

    月の遥かになりました
  見果てぬ夢よ
  あの頃よ


     <郷 愁>