檸檬の黄鮮やか画布に写し取り



 青き影添へて檸檬を描きけり  ふけとしこ 鎌の刃

 青年飢えてつねにレモンの香を放つ  穴井太

 静脈のほのかなる手に檸檬きる  西島麦南

 雪の窓メロンの緑レモンの黄  日野草城

 雪の日の口にひろがる檸檬の香  高澤良一 随笑

 雪降り来牛乳とレモン睡る窓  小池文子

 扇風機籠のレモンに風送る  横山白虹

 送り出してひとりの朝餉レモン切る  寺岡捷子

 太陽と湿地ゆくポケットのレモン  橋閒石

 堕ちてゐるレモンの庭や湖四月  飯島晴子

 大きレモンの冬陽のやうな黄をしぼる  上野さち子

 鷹の目の檸檬色して岬見る目