櫨紅く秋冷の空気澄み渡る


 秋冷のかはせみ声をあやまたず  岡井省二 有時

 秋冷のさすがにしぼむ乳房かも  飯田蛇笏

 秋冷のさだまる岸の深みどり  飯田龍太
 
 秋冷のふるさとを瞰る子のために  飯田龍太

 秋冷のまなじりにあるみだれ髪  飯田蛇笏 家郷の霧

 秋冷の一幹として立ちつくす  鷲谷七菜子 一盞

 秋冷の一夜を経たる新墓域  飯田龍太

 秋冷の雲少しづつ海に出る  廣瀬直人

 秋冷の樫に葬家の煙り澄む  飯田龍太

 秋冷の嬉々たる歩み戸を過ぎし  飯田龍太

 秋冷の極みの滝の散れるかな  鷲谷七菜子 花寂び

 秋冷の空とどまれば子の頭にも