ラーメン屋灯り涼しく宵の街


 吾子の電話へ愛猫涼しく鳴き込める  奈良文夫

  味噌醤油涼しくなりはじめておりぬ  池田澄子

 冷や麦の汁(つゆ)に茗荷涼しげに アロマ

  呼びかはす船笛涼し国若し  鍵和田[ゆう]子 飛鳥

  呼鈴の応へなきまゝ月涼し  『定本石橋秀野句文集』

  命得て歩めば涼し土ふまず  小檜山繁子

  和紙明りかすかにゆらぎ灯涼し  小川濤美子「和紙明り」

  唐崎の昼は涼しき雫かな  千代尼

 問はれれば一言応ふこと涼し  上野さち子

  喜雨涼しく詩の行間を広く組む  白井春星子 『喜雨』

  喫茶去の乙女の背丈涼しかり  原裕