蝉時雨夏の記憶の鮮明に


 おかめ笹しぐれんとする湖の碧  角川源義

 おとなしき時雨を聞くや高野山  上島鬼貫

 通天やしぐれやどりの俳諧師 川端茅舎
 
 三日の月はゞかりながら俳諧師  加藤郁乎 江戸桜

 秋の雲眺めて無為や俳諧師   山口青邨

 秋風やあはれ氣もなき俳諧師   秋風 正岡子規

 初音てふふんすんごかし俳諧師  加藤郁乎

 はつなつを明け放たれて俳諧寺  山田みづえ

 下総に俳諧寺あり一茶の忌  水見壽男

 枯れ菊を焚きしかをりの俳諧寺  東福寺碧水

 秋ぐちの日暮は藁の俳諧寺  能村登四郎

 春の蠅探せばをりぬ俳諧寺  高澤良一