西郷隆盛と可愛岳(えのだけ)③

【可愛岳突囲】では、当初、西郷は山駕籠に乗っていたが、100kg以上あったとされる西郷
の巨体を運ぶのは容易ではなく、急斜面では西郷も駕籠を降りて、<ザレの頭>からは雑兵たちと同じように、四つ這いになって切り立った断崖をよじ登ったといいます。
この時、西郷は『夜這んごつある(夜這いのようだ)』とつぶやいて、周囲を笑わせたと伝えられています。この一言で緊張が解けたと生き残りの人たちが、のちに語ったという。

『薩軍、西郷・桐野以下、数百人が俵野から可愛岳を越えて脱出した』という報は、参軍山県有朋にとって、まったく予想外のことであった。彼は山々や谷々を埋める