上野散歩 ―閉館間近の長浜美術館を訪れてー

「内陣の正面に大きな黒塗りの須弥壇が据えられ、その上に三体の仏像が置かれてある。中央正面が十一面観音、その両側に大日如来と阿弥陀如来の座像。二つの大きな如来像の間にすっくりと細身の十一面観音が立っている感じである。体躯のがっちりした如来坐像の頭はいずれも十一面観音の腰のあたりで、そのために観音さまはひどく長身に見える。
(略)『宝冠ですな、これは。――みごとな宝冠ですな』思わずそんな言葉が、架山の口から飛び出した。丈高い十一面の仏面を頭に戴いているところは、まさに宝冠を戴いているように見える」
井上靖の小説「星と祭」は若い男女が琵琶湖で亡くなり遺体は見つ